次代への羅針盤
二次電池開発の世界的な拠点構築へ
電気化学分野で数々の実績を積み上げてきた世界的な研究者が、次代のエネルギー・二次電池の研究開発を牽引する。
Tetsuya Osaka
逢坂哲彌
早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構特任研究教授 早稲田大学理工学術院 名誉教授
試作までできることが重要
早稲田大学には、ナノテクノロジスーとライフサイエンスの領域を担う人材を、学部を超えて結集した「ナノ・ライフ創新研究機構」があります。7つのプロジェクト研究所が設置されており、2015年には「スマートエナジーシステム・イノベーションセンター」も開設されました。
通称“電池ビル”と呼ばれるこのイノベーションセンターは、次世代のエネルギー・蓄電池を開発、試作して世に問うための世界的拠点を目指しているため、ここには、実際にリチウム二次電池の製作が可能なスーパードライルームが完備されています。国内の大学でこのような設備を持ったのは、このセンターが初めてでした。特に給気露点温度−98℃のスーパードライルームは30年ほど前に私たちが初めてシステムを提案して開発したものです。
二次電池の研究開発をしている大学は珍しくありません。しかし、実験で優れたデータが出ても、その数値が実用化されたときにも維持できるとは限りません。むしろデータに大きな乖離が出ることのほうが多いかもしれません。電池とはそういうデバイスであり、だからこそ電池の研究開発では、試作までできることが重要になるのです。実際、ここではコイン型からシート型、缶型、さらに積層したものまで多様な電池を試作しています。
さらに私たちはこのイノベーションセンターで、単電池からモジュール、および大型蓄電池の状態把握システムも開発しました。これにより蓄電池の劣化度を非破壊で測定することができるようになりました。
かつて半導体が「産業の米」や「キーテクノロジー」と言われたように、現在は二次電池があらゆる仕事や生活に欠かせないものとなっています。そうした二次電池の研究開発において、私たちは産官学連携のもとで技術開発・評価試験を行い、次世代電池の開発を牽引しています。