次代への羅針盤
学ぶことがあれば研究は面白くなっていく
青柳秀紀
微生物の99%は未知の存在
ところが近年、ゲノム解析の技術が進んだ結果、非常に驚いたことに、これまでの培養法で単離培養できる微生物の種類は、自然界に存在する微生物のわずか1%程度にすぎないことがわかってきました。つまり、自然界にはまだ残り、99%の微生物が存在するということです。そして、それらの微生物の全容はまだほとんど明らかにされていません。そうした未知の微生物のことを総称して“微生物ダークマター”と呼んでいます。
これらの微生物ダークマターの中から有用な微生物を発見し、培養し、利用することができれば、新しい医薬品や食品の開発につながる可能性がありますし、新しい産業が生まれるかもしれません。
しかし、こうした未知の微生物はなぜこれまで発見されなかったのでしょうか。じつは、従来の培養技術にも大きな問題があります。たとえば現在まで、微生物の単離培養には、寒天培地を用いる培養法が使われています。この培養法は、先ほど名前をあげました、ロベルト・コッホによって確立されたものです。しかもこの培養法がつくられたのは19世紀のこと。それから100年以上が経った今も、19世紀の頃とほとんどかわることなく使われています。