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伝説のテクノロジー

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1000年の歴史と伝統が支える平成の備前焼

備前焼作家 伊勢崎 紳さん

松がなければ備前焼はできない

 備前焼でよく使われる登り窯は、長さが数十メートルになるものもある。伊勢崎さんの工房にある登り窯も、下部から上部まで10メートル以上ある。その窯の中のどこに作品を置くかで、どのように焼き上がるかほぼ分かるという。

 「アマチュアの方が焼くと、突然変異的にとてもいいものができることもあります。でもアマチュアの方はそれと同じようなものを再現することはできません。僕らは窯に詰めている時点でどのように焼けるかだいたい分かっていますし、実際に8割がたは思い通りに焼けます。アマチュアの方が突然変異でつくったものも、僕らは見ただけでいくらでも再現できます」

 焼きの技法にはもうひとつ、重要なポイントがある。窯に入れた作品を焼くときには、松の割木を使うという点だ。すべての備前焼作家が松を使っているかどうかは定かではないが、伊勢崎さんは「松がなければ備前焼はできない」とまで言い切る。

 「かつては備前でも雑木を使って焼いていたことがあるようです。でもうまく焼けず、いろいろ試して松が一番適しているという結論になったのです。僕は赤松の割木を使っています。松の灰はマグネシウムと鉄分を含有していると言われ、それが焼き上がりにいい効果を出すのです。松やにの脂も大事です」

 登り窯の場合、最初の4日間だけはガスの火を使う。最初から割木を使うと温度が一気に上がりすぎて、作品が割れやすくなってしまうからだ。4日間かけて窯内の温度を100℃まで上げたら、そこから割木をくべ、2週間かけて1,250℃までゆっくり温度を上げていく。

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