伝説のテクノロジー
1本の木で命の尊厳を表現
28歳で盆栽の世界に入り、2002年には私財10億円を投じて「春花園BONSAI美術館」をつくった小林國雄さん。世界中に知られる盆栽の巨匠が「40年やってようやく盆栽の本当の魅力に気がついた」と言う。鉢に植えた1本の木で表現する盆栽の美は、奥が深い。
盆栽作家 小林國雄さん
外からも弟子入り志願者が
東京都江戸川区の住宅街にある春花園BONSAI美術館には、観光バスも停まれる駐車場がある。土日には観光バスに乗った団体客を中心に300人前後が訪れる。年間約2万人を数える入場客のおよそ7割が、外国人だ。
「外国人向けのインターネットサイトでは、東京に行ったらぜひ訪れたい観光スポットとして、この美術館が5番目に紹介されているそうです」と穏やかな表情で小林國雄さんが言う。
美術館に来るのは観光客だけではない。海外のマスコミも取材にやってくる。テーブルの上で新聞や雑誌の記事を広げながら「これはどこの国だったかな」と小林さん。見ると英語以外の文字が並んでいる。英語圏に限らず、ヨーロッパやアジア、南米などのマスコミも来るのだと言う。
今や盆栽はBONSAIとして世界各国で通用する言葉になっている。2002年にこの美術館を開いたのも、こうしたグローバル化の時代が必ず来ると感じたからだ。今はベトナムやインドネシアなど東南アジアでBONSAIがブームになっていると言う。
約800坪もある美術館の敷地内には、およそ1000本の盆栽が展示されている。なかには1億円の値がつく盆栽もある。芸能人の格付けをするテレビ番組で、1億円の盆栽として紹介されたのも、小林さんの作品だ。盆栽界で最高の栄誉とされる国風賞を受賞すること16回。日本盆栽作風展でも事実上日本一の内閣総理大臣賞を4回受賞している。
まさに盆栽界の巨匠であり、その名声は海外にまでとどろいている。これまでに講演やデモンストレーションなどのために訪問した国は32カ国。そんな小林さんに憧れて、海外からも弟子入り志願者が来る。これまで育てた海外の盆栽職人は約100人。取材当時7人いる弟子のうち、1人はポーランド人、2人は中国人だ。