One Hour Interview
新たな有機合成法の確立を目指す
新谷亮
こんな合成ができないかと考える
なぜ縫合反応を開発することになったのですか。
合成が好きなんです。だからこんな合成ができないかということをよく考えています。あるとき、2つのものを縫い合わせるような反応ができたら面白いなと思いつきました。そういう思いつきが最初にあったわけです。そこからどういう分子ならできそうかということを考えていきました。その結果、こういう構造の分子が描けたわけですが、そういう分子がすでに世の中にたくさんあり、つくり方も簡単であればわざわざ研究する必要はありません。ですからこういう構造が知られているかどうか調べました。有機合成というのは、1つの反応で1カ所ずつつなげていくのが基本になっています。2カ所、3カ所くらいなら一気につなぐ方法もあったりしますが、異なる分子の間で縫合反応のようなつなげ方ができる反応はありませんでした。
その反応を開発するうえで難しかったのはどのような点ですか。
けっこういろいろありました。とくにどんな触媒を使えば縫い続けてくれるのか、というところは試行錯誤しました。文献や経験でロジウムが一番よさそうだとわかりましたが、もちろんほかの触媒金属も検討しました。ロジウムに決めてからも、いろいろ修飾すると触媒としてのパフォーマンスが変わりますから、期待通りのパフォーマンスを発現させるのにも時間がかかりました。縫い合わせる最初のところがきちんと合っていないとうまくいかないので、そこは分子のデザインも必要でした。
そこは何度も実験を繰り返すしかないのでしょうか。
と言っても、闇雲にやるわけではありません。このプロジェクト以外にも反応をデザインする研究はいくつか手がけていますが、研究を進める際は、その実験は何を目的にするのかということを明確に設定して、結果はどうだったのか、仮説は正しかったのかと1つひとつ検証したうえで、次は何をすべきかを考える、そういう進め方をしています。