One Hour Interview
高分子合成で有機太陽電池材料を創製
有機エレクトロニクス分野の先進的な研究で知られる山形大学。
東原知哉さんはそこで有機太陽電池の材料開発に挑み成果をあげている。
東原知哉
山形大学
大学院有機材料システム研究科
有機材料システム専攻 教授
有機エレクトロニクスに特化したセンターで
先生がセンター長を務めておられる山形大学有機エレクトロニクス研究センターとはどういうところですか。
2011年に本学が開設した有機エレクトロニクス分野の研究をする世界拠点の一つです。国内外の研究者がここに集結し、有機EL、有機太陽電池、有機トランジスタなどの分野で世界最先端の研究に取り組んでいます。有機エレクトロニクスに特化した材料合成設備やクリーンルーム・デバイス作製設備、有機材料およびデバイスの評価・解析設備などをそろえ、山形大学有機材料システムフロンティアセンターや有機エレクトロニクスイノベーションセンターなどとも連携しています。有機エレクトロニクスに特化したこのような研究施設は世界的にも珍しいと思います。
先生自身はどういう研究をされているのですか。
専門は高分子合成で、ポリマーを合成し、有機太陽電池などの有機エレクトロニクスの材料に応用する研究をしています。有機太陽電池パネル自体を開発する研究などと比較すれば、より川上に位置する研究といえます。環境に与える負荷の低いクリーンなエネルギーに使う材料を、有機物でつくる研究です。
高分子合成についてもう少し詳しくご説明ください。
高分子は学問として扱いにくいといわれています。例えば低分子の酸素は32というように分子量が一定です。ところが合成した高分子は分子量が不規則で、大きさもまちまちです。なので、分子の大きさがそろうように制御しながら高分子をきれいにつくるのは難しいのです。ノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生は導電性高分子の飛躍的発展に貢献されましたが、私たちはそれをさらに1歩進めて、高分子で新しい半導体材料をつくろうとしています。導電性と不導体性、両方の性質を持つような高分子材料です。分子量をコントロールできる新しい重合法を開発し、触媒・温度・濃度・時間などの重合条件を最適化していきます。こうして、狙ったとおりの物性値を出すような半導体高分子をつくりたいと考えています。とはいえ、狙いどおりにいかないのが研究の常ですが……。