次代への羅針盤
第3世代有機EL素子開発で世界をリード
安達千波矢
データを数式で説明しろ
フォレスト先生の指導は想像を絶するほどハードでした。雪が降ろうが嵐が来ようが毎週水曜日は朝7時からミーティングです。そこで成果が報告できなければ、厳しい声も飛んできました。日中もほぼ3~4時間ごとに「What?s new?」と質問される日々でした。論文を提出すれば疑問点や修正点がびっしり書き込まれて突き返され、「明日までに書き直すように」と言われ、必死にこなしていくうちに、本当の実力がついていきました。
そのときに、「実験データを全部数式で説明するように。数式で表せて初めて物事を理解できたといえる」という考え方には心底感動しました。そのとおりだと思います。以来、私はこの言葉を肝に銘じて研究に取り組んでいます。
プリンストンでは、第2世代のリン光材料を使った有機EL素子の開発プロジェクトが始まり、私もそこに加わることができました。そして第2世代の発光材料開発にどっぷりと浸かり、2000年頃にはイリジウム錯体を使ってほぼ100%、電子を光に変換できるようになりました。
プリンストン大学には世界中からトップクラスの学生が集まっていました。あのとき集まった人たちが今世界中に散らばり、ネットワークをつくっています。グローバルなネットワークをつくることは研究者にとってとても大事なことで、日本の学生はもっと積極的に海外に出ていった方がいいと私は思います。