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次代への羅針盤

次代への羅針盤

真の科学技術創造立国となるために

野依良治[前編]

多様な人材を登用すべき

 1999年、ハンガリーで開かれた世界科学会議で出された「ブダペスト宣言」では「社会のための科学」が提議されました。社会に対する科学の責任を宣言したわけです。

 もちろんそれは知識のための科学を否定したものではありません。純粋科学が今も必要とされていることは間違いありません。しかし、純粋科学も今は学際領域の発展とともに、さまざまな分野の統合が進んでいます。

 技術開発とか社会の変革を目指すことになると、多様な知識を統合することがより一層重要になります。昔のようにひとり、書斎にこもってということでは、もはや社会の要請に対応できません。純粋科学も、広く社会のためということを求められる時代なのです。

 そうした社会の要請に応えるためには、多様な考えが必要で、若者や女性、外国人などをもっと登用していかなければなりません。そうした人たちを思い切って研究リーダーにするくらいでなければだめです。

 近年は研究領域がますます複雑化し、高度化し、多様化しています。そのため自分の専門分野の知見だけでは優れた成果を上げにくくなってきています。その結果、今は共同研究が盛んになっています。大学などのアカデミアから発表される研究論文を見ると、世界では半数以上が国際共同研究になっています。

 ところが日本ではそれが30%台しかありません。化学の分野に関していえば20%台とさらに低いのが実情です。

 自分たちの専門分野だけにこだわっていては、出てくるアイデアも限られたものにならざるを得ません。国境も学問領域も超えた共同での取り組みからの方が、革新的なものが出てくるのは当然でしょう。

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