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次代への羅針盤

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真の科学技術創造立国となるために

野依良治[前編]

憂慮すべき協調力の低下

 これは科学や学術のことに限ったことではありません。世界における日本という国の存在感の低下、あるいはアジアでの孤立化を見ていると、私は憂慮せざるを得ない気持ちになります。

 日本は国際競争力が落ちていると言われます。しかし本当に落ちているのは、競争力よりむしろ協調力なのではないでしょうか。

 世界標準の教育、研究体制をつくり、世界と協調していかなければいけないのです。

 そのためにはグローバルに広くて多様な人脈をつくる必要があります。もちろん素養が必要で、誰もができることではありません。残念ながら今の日本には、そういう人脈をつくることのできる魅力的な人材が枯渇しています。

 教育ということでは、若い人たちが自ら考える力を養うようにする必要があります。そのためにはさまざまな個性を持った多くの人たちと触れ合うことが大切になります。そこで想像力が触発され、考える力が養われ、夢を描けるようになる。ですから若い人への教育は、産官学というよりも、むしろ社会が総がかりで考えていかなければいけません。

 トーマス・フリードマンは「The World is Flat」と言いましたが、今はヒト、モノ、金、さらに情報が国境を越えて自由に行き来しています。どの国も、自分たちの力だけではもう対応しきれません。研究教育にしても、欧米は国際化して、どんどん外から人材を導入しています。そういう国はたとえ人口や経済規模が小さくても、時代が求める人材が育っています。しかし、日本は相変わらず閉鎖的なところがあります。

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