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伝説のテクノロジー

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セルラーゼに魅せられ、氷河期を乗り越えて続けた研究

森川康さん

2020年までの実用化を目指す

 2009年、森川さんは長岡技術科学大学を退職した。同年3月に行った最終講義のタイトルは「セルラーゼに魅せられて」。京都大学時代や1968年に入社した協和発酵では酵素を研究していたが、1981年にセルラーゼと出会い、以来30年以上にわたりセルラーゼに関わる研究を続けてきた。セルラーゼにはまだ分からないことがあり、興味の尽きない酵素であること、そして今後のバイオマスエネルギー開発のカギを握る重要物質であることが、森川さんにとってはたまらない魅力に映るのだろう。現在も技術顧問を務める財団法人バイオインダストリー協会と、名誉教授を務める長岡技術科学大学を拠点にしながら研究に勤しむ日々だ。

 「2015年から20年までの間にセルロース系バイオマスから(ブドウ)糖やエタノールを生産する技術を実用化するのが目標です。糖は食料にもなりますし、化学工業の原料にもなりますから、この研究はバイオリファイナリーの発展につながります。究極的には、右から木や紙を投入したら、左から自動的に糖やエタノールが出てくる、そんな設備がつくれたらいいでしょうね」

 口調は穏やかだが、森川さんの言葉の端々からは研究にかける熱い思いが伝わってくる。氷河期を乗り越え、ひたすら研究に打ち込んできた森川さんは、今もセルラーゼに魅せられ続けているのである。

[もりかわ・やすし]長岡技術科学大学名誉教授。財団法人バイオインダストリー協会技術顧問。1944年生まれ。京都大学工学部卒、京都大学大学院修士課程修了(工業化学専攻)。協和発酵(現協和発酵キリン)東京研究所で15年、酵素の研究をしたあと、本社へ異動。研究開発部、研究開発企画室、食品酒類企画開発センター主査を経て、1991年、長岡技術科学大学教授に就任。2009年、同大を退職したあとも、同大とバイオインダストリー協会を拠点にセルラーゼによる糖化などの研究に取り組んでいる。

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