伝説のテクノロジー
消えかけた国産線香花火の灯を守る
花火製造職人 筒井良太さん
火薬の量は0.08グラム
火薬ができたら、今度はそれを紙の中に入れる作業だ。筒井さんが「さじ」と呼ぶ手づくりの道具で火薬を掬い取り、すりきると、ほぼ正確に0.08グラムの分量になる。
「火薬の量が1%でも違うと、火花の飛び方が違ってきます。火薬が多すぎると火をつけて玉になったとき落ちやすくなってしまいます。職人たちには、0.08グラムを100%として、95%くらいにするように指示しています」
という筒井さん自身は「きっちり100%の分量にすることができますが、それでもときどき微妙に狂うことがあります」と、語る。
火薬を紙の中に入れる作業も熟練が必要だ。紙をこより状に縒(よ)っていきながら火薬を包んでいくのだが、中に空気が入っていると紙だけが先に燃えてしまう。そうならないように指先にしっかり力を入れて縒っていく。とくに大事なのは、火をつけて高温になった玉を受ける“首”の部分だ。
「玉の温度は最高で800度くらいになります。それを薄い紙のこより1本で支えないといけないのですから、指先に神経を集中させてしっかり縒っていきます」
そうしてできあがった線香花火は、まず試しに火をつけてみる。うまく火薬を紙の中に収めたつもりでも、火花があまり飛ばなかったり、玉がすぐ落ちたりすることもあるからだ。