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伝説のテクノロジー

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ステンドグラス製作・修復

ステンドグラス職人・松本一郎さん

3年間仕事が途切れない

 松本さんによるとステンドグラス製作はコンスタントに依頼が来ることは珍しいのだという。だが直近3年間は「新型コロナの感染拡大もどこ吹く風」というほど仕事が途切れないという。

 「ステンドグラス教室などは新型コロナの影響で生徒さんが来なくなってしまい、大変だと聞きます。うちも新規の仕事はそれほど多くありませんが、修復の仕事が次々と来て忙しくさせていただいています。修復の仕事はどこでも引き受けられる仕事ではありませんが、うちはゼネコンの仕事も受けていますし、実績もあります。ものを見れば、それがいつ頃、どういう工法でつくられたものなのかすぐに説明できますから、お客様にも安心していただけるようです」

 創業から70年以上が経過し、最近は、過去に同社自身がつくったものを修復してほしいと依頼を受けることも増えた。破損したガラスの修復や、引っ越しに伴うステンドグラスの移設といったケースが多く、ステンドグラス自体が壊れたというケースはほぼ皆無だ。

 だが、松本さんには一つ、心配なことがある。「ステンドグラスづくりがしたい」といって入社を希望してくる人はこの10年、ほとんどいない。最近では若手の杉崎周太郎さんが社員として加わり、新規の製作や修復もできているが、父親で社長の松本健治さんは現場の仕事にははほとんど携わっていない。20年後は松本さん自身も70歳になってしまう。「このままいくと、20年後に修復できる人がいなくなってしまうかもしれません。この技術が失われないように何とかしなければいけません」と、松本さんは危機感を強めている。

 光の差し方によって表情を変えるステンドグラスには、独特の美しさがある。20年後、その魅力を創造したり再現したりできる人が何人いるか……。ステンドグラス業界の未来に光が差すことを願いたい。

松本一郎[まつもと・いちろう] (写真(左)松本一郎さん、(右)杉崎周太郎さん)1972年、東京都生まれ。駒澤大学経済学部卒業。当初は家業を継ごうという明確な意思はなかったが、大学卒業後に成り行きで松本ステインドグラス製作所に入ったという。2021年5月から代表取締役に就任。父親で現社長の健治さんとともにステンドグラスの伝統を守り続けている。趣味はトロンボーン演奏。

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