伝説のテクノロジー
キュウリ生産
農業・田口則男さん
「松野菜」を商標登録
松葉堆肥を使って野菜づくりをしているのは、美浜町だけではない。九州などでも松葉堆肥でタマネギなどを生産しているところがある。しかし、美浜町農林水産建設課の龍神直翁さんによれば「松葉の堆肥を使った野菜づくりを始めたのは、美浜町が最も早いほうだと思います」という。日本海岸林学会ホームページの「海岸林用語集」で検索すると、「松葉堆肥」の項で美浜町の例が挙げられており、美浜町は松葉堆肥を使った野菜づくりの代表的な地域となっている。
現在、美浜町ではキュウリだけでなく、トマトやイチゴの生産も松葉堆肥を使って行われている。ブランド研究会ではこうしてつくった野菜を「松きゅうり」「松とまと」「松いちご」の3種で商品登録してブランド化を図り、農協を通じて主に和歌山や大阪に出荷している。「松キュウリ」は、東京・有楽町交通会館内にある和歌山県のアンテナショップでも販売することがある。
「町はブランド研究会の取り組みを支援する立場として、立ち上げ時から一緒に取り組んできました。職員が松林のイメージキャラクターの『まつりん&ぼっくりん』の着ぐるみを着て、販促活動を行うこともあります」(志賀さん)。販促活動の一環として、キュウリの新しい食べ方を募集したこともある。いくつものアイデアが提案されたが、志賀さん自身がおいしいと思ったのは、意外にもてんぷらだったそうだ。
そのほか、大阪の大手百貨店で行われたイベントでPRしたり、新型コロナが感染拡大する前は道の駅や高速道路のサービスエリアなどで「松野菜」を販売するなど、美浜町は積極的に販促活動を行っている。今年10月には、大手海運会社が運航するクルーズ船のディナーで「松キュウリ」を使いたいという申し込みがあり、提供したこともあったという。