One Hour Interview
多様な用途が期待できる木質系炭素材料を開発
木質系炭素材料は、さまざまな分野でデバイスとして活用されている。
水野 潤氏は木の仮導管構造を維持したまま、用途に合わせた形状に
炭化するプロセス技術を駆使して新しい木質系炭素材料を開発。
電極や炭素ガス無害化素子などへの展開を試みている。それらの中には
実用化の段階を迎えているものも少なくない。民間企業で働いた
経験があり、実用化の難しさを知っているからこそ、その手腕には
国内外から期待が寄せられている。
水野潤
早稲田大学
ナノ・ライフ創新研究機構
教授
仮導管構造を維持して炭化する
木材に関わる研究をされているそうですね。
間伐材の処理が日本中で問題になっていると聞いて、木材の活用について研究しようと考えたのがきっかけでした。セラミックスや活性炭など多孔質材は産業分野で広く使われています。活性炭をデバイスに適した形に加工できれば、用途が広がるのではないかと考えたのです。木には仮導管があります。その仮導管自体にも小さな孔があり、管の間を水や栄養分が行き来しています。この仮導管の構造を維持したまま炭化することができれば、安価な多孔質体が形成できることになります。
構造を維持したまま炭化するところがポイントですか?
そこがプロセスノウハウで、一番難しいところでした。詳しくはお話しできませんが、まず一定の温度まで上げて炭化し、そのあとまた温度を上げるという方法を取っています。最初から一気に炭化する温度まで上げると燃えてしまって形も崩れてしまいます。陶器も一気に高温で焼くと割れてしまうそうですが、同じようなイメージですね。
その材料はすでにできているのですか?
極めて細かい貫通孔を持ち、薄板化、フレキシブル化が可能な木質炭素材の開発を実現しています。私たちはこの機能性木質材料を「Film of Lignocellulosic Carbon Material」(FLCM)と命名しています。