ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

大学や企業の壁を越えもっと外へ

片岡一則

刺激に満ちた梁山泊

 もともと私は高分子化学が専門です。東京大学の修士課程では、アニオン重合を中心に高分子化学の基礎をしっかり学びました。ところが博士課程に進むとき、研究室の鶴田禎二先生に相談したら「これからは人類福祉の役に立つ化学がいい」と言われました。「それは何ですか」とお聞きしたら、医療材料だという。今でいうバイオマテリアルです。そこから私は医療分野に関わる高分子化学を研究するようになり、博士課程修了後は東京女子医科大学に助手として就職しました。このときの経験が私に大きな影響を与えました。女子医大の研究室には大学も専門も違う人間が集まっていたのです。そして電気や機械、薬学などさまざまな分野の人間が同じ部屋にいて研究をし、毎日のように議論したり宴会をしたりしていました。まるで梁山泊のようなところでした。

リトリート風景

 自分の知らない分野の人と話ができたことは非常に刺激的でした。自分だけの狭い分野だけで研究活動をしていると、自分を過大評価するか過小評価するか、どちらかになりがちです。けれどもこれを契機に私は多様な分野の学問領域を積極的に取り込んでいくようにしました。その結果、私の研究はとても広がりのあるものになっていきました。

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