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伝説のテクノロジー

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狂言は人間の弱さを面白おかしく表現する“立体落語!!”

狂言師 善竹十郎さん

一言発するだけで客の心をわしづかみ

 狂言にも台本はある。だが、善竹さんは幼いころ、台本は一切与えられなかった。師匠と向き合って座り、師匠が言ったセリフを節やリズムを真似て繰り返す口伝が基本だったのだ。

 「人にもよるでしょうが、やはり最初のうちは本を読んで覚えるより耳で覚えた方がいいようです。私は台本を見なくてもすぐに演じられる狂言が40~50曲はあります」

 芸歴60年を超えるそんな善竹さんだが、自分の芸が完璧だと思ったことは一度もなく、「まだまだ修行中の身」と言ってはばからない。狂言の場合、特に難しいのは「響きと間(ま)」だという。

 狂言は能楽堂で行われることが多いが、ときには野外や大ホールで行われることもある。そういう場合、どこまで声を響かせることができるかが、大きなポイントになる。もちろんそれは単に大きな声を出せばいいというものではない。

 「一言発することで、お客様の心をぐっとつかまなければいけない。響かなければ、お客様の心はすぐ離れてしまいます」

 と言って、善竹さんは「いろはにほへとちりぬるをわか」を、抑揚をつけて謡いだした。驚いたことに、「いろは」から「をわか」まで一息で謡うか、途中で音節を切るか、それだけのことで伝わり方が全然違ってくるのだ。

 「切ってはいけないところで切ってしまうのは、息が浅くなっている証拠です。狂言師は常にクオリティの高い声を発しないといけません。私は風邪を引かないように気を付けていますし、暴飲暴食もしません。カラオケに誘われたらお供しますが、私自身は1曲も歌いません(笑)」

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