ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

家具製造

パイオニアプランツという家具のブランドがある。
使っている木材は、家具材としては一般的ではないアカマツだ。
なぜ、アカマツなのか…。
そこにはつくり手たちの森林問題に対する真摯な思いがある。

やまとわ代表取締役&
家具職人・中村博さん

輸入木材への依存度が高い森林国・日本

 家具ブランドのパイオニアプランツは、いす、スツール、トレイ&レッグなど信州伊那谷のアカマツでつくられた製品を製造・販売している。いすやスツール、トレイ&レッグなどはいずれも折り畳むことができ、子どもでも持ち運べるほど軽い。巣箱のようなデザインのボックスは、中にスマートフォンを入れて音楽を楽しむ、電気を使わない木製スピーカー。バッグは、ピクニックに行くときなどに食べ物を入れるのにうってつけだ。

 パイオニアプランツとは、ある場所が裸地になったとき、その土地の風土に合って最初に育つ植物のこと。アカマツは信州伊那谷のパイオニアプランツである。

 パイオニアプランツを展開する株式会社やまとわの中村博さんが家具づくりにアカマツを使うようになったのは、日本の森林問題について知ったことがきっかけだった。

 「家具職人を始めた頃は、僕もブラックオールナットとかホワイトオークといった輸入材を使っていました。その当時、日本の木材自給率は18%程度しかなく、80%以上を海外からの輸入材に依存していたのです。それを知って、世界中でものすごい勢いで森林が減少していることに、僕自身も加担しているのではないかと考えるようになりました」

 日本は国土のおよそ7割が森林だ。その森林を戦前、戦中に大量伐採したため、戦後は積極的に植林を行った。植えた樹種の多くは杉だった。ところが安くて良質な輸入材が大量に入ってきたため、植林してつくられた人工林は間引きも枝打ちもされず、放置されることが多くなっていた。

 国内に使える木があるにもかかわらず、多くの木材を輸入している。そうした実情を知った中村さんは、「地元の木を使った木製品をつくることで、日本や世界の森林が抱える問題の解決に少しでも貢献できるのではないか」と考えた。

次のページ: 家具づくりにアカマツの性質を活かす

1 2 3 4