One Hour Interview
新しい連結様式で拡張型ポリアニリン誘導体を精密合成
連結様式を変えることで、物性が大きく変わるカルバゾールの構造。
その特性に注目して、今までになかった連結の高分子を合成し、
有機半導体高分子として太陽電池などのデバイスへの応用を目指す。
と同時に、化学は面白い、実験は楽しいという経験を、学生にも共有させたいと強く願う。
准教授に就任して2年目、道信研究室は徐々にその個性を発揮し始めている。
道信剛志
東京工業大学大学院
理工学研究科有機・高分子物質専攻
准教授
連結させる位置で特性が変わる
導電性の有機半導体高分子の開発がひとつの研究テーマだとお聞きしました。もう少し詳しく説明していただけますか。
最近はポリアニリンの化学構造を少し変えた材料を使っています。そのひとつとしてベンゼン環2つと窒素を含むカルバゾールという構造を利用して有機半導体高分子をつくろうとしています。
カルバゾールという構造には、連結させる位置の順番が1から9まであります。たとえば3番目と6番目を連結させたものは、ポリ(3,6-カルバゾール)と呼ばれます。面白いのは、連結させる位置で特性が大きく変わることです。たとえばポリ(2,7-カルバゾール)は導電性がとても高くなります。私は、ポリアニリンと同じように、窒素で連結させた高分子もつくりました。これはプラスの電荷を流しやすい特性があります。高分子材料は、任意の大きさで薄膜をつくることができ、製造コストが安いという利点があります。そういう安価な材料でつくった薄膜は、有機EL素子や有機メモリー素子の活性層として機能することを示しました。
1から9まで、どこでも連結させることができるのですか。
連結させようとすれば、できないことはないと思います。ただ、4と5を連結させたという報告はまだどこからも来ていません。4と5を連結させようとすると3次元の立体的な化学構造を設計する必要があり、難易度が高いからです。