One Hour Interview
新しい連結様式で拡張型ポリアニリン誘導体を精密合成
道信剛志
2つの側面がある大学の仕事
この研究の最終的なゴールは、どういうところになるのでしょうか。
世界最高のトランジスタをつくるとか、最高の光電変換効率を示す太陽電池をつくる、といったことが実現できればもちろんいいのでしょうが、私個人としてはそこまで求めていません。大学での研究ですから、学生が設計して、実験をし、うまくいくプロセスを勉強し、成功体験を得て社会に出て産業界で大きな成功をする。そういうことにつながればいいと思います。
それは、研究者というより教育者としての考えですか。
大学の仕事には2つの側面があります。ひとつは研究者として一番いいものを世の中に送り出すとか、新しい発見をするという仕事です。多分、それをモチベーションにしている先生は多いと思います。ただ、大学の研究者は教育者でもあるわけです。したがって、どれだけいい学生を育てるかということも大事になります。そのためには自分がやりたい研究だけをしていてはダメで、考えるプロセスを学生に学ばせなければいけません。教育と研究は、相反するところがあると思います。そこをうまく組み合わせ、バランスを取りながら取り組んでいくような研究室をつくりたいと考えています。まだ始めたばかりですが、その難しさを今、ひしひしと感じているところです。
どういうところが難しいのですか。
やはり研究の面白さを学生に分かってもらうところですね。東工大の場合、学部4年生になると卒業研究をするために研究室配属されますが、1年間卒業研究をして、「研究って面白い」と思って大学院に進学する学生をどれだけ増やせるか。卒業研究をして、なかなかうまくいかなくてもその困難を乗り越え、研究は面白いと感じるようなテーマを提供したり、環境をつくることがとても重要になりますが、そこが難しいのです。
先生ご自身は、研究は面白いと感じていらっしゃいますか。
もちろん(笑)。
どういうところが面白いのですか。
化学が好きだということが根本にありますが、化学の中でも有機合成とか高分子合成という分野は、世の中にない新しいものをつくり出すという、ものづくりの面白さがあります。