One Hour Interview
新しい連結様式で拡張型ポリアニリン誘導体を精密合成
道信剛志
トライ&エラーの繰り返し
この研究でご苦労されているのはどういうところですか。
やはりデバイスに応用したときの安定性ですね。導電性のデバイスの場合、電圧をかけるわけですが、有機材料は電圧をかけると少しずつ壊れてしまうという問題があります。その壊れ方をどれだけ少なくするかということが、デバイスとしての寿命に関わってきます。化学構造を調整することでそこを解決するのが一番難しい点です。
そこはトライ&エラーの繰り返しということになるのでしょうか。
そうですね。この構造だと安定性が不十分なので、新しい位置に置換基を入れてみるとか、置換基の種類を変える、あるいは連結様式を大きく変えてみるなど、いろいろ試す必要があり、まさしく試行錯誤の連続です。
この研究がうまくいくと、どういう成果が得られるのでしょう。
ポリアニリンよりベンゼン環がひとつ余分についている化学構造から予想できることとしては、より多くのπ電子を持っていることで、伝導性が高い可能性もありますし、π電子の広がりが大きくなると、吸収波長が長波長まで広がっていくことも考えられます。そうすると太陽光の長波長領域が、より効率よく吸収できるような材料になる可能性もあります。
それが工業材料に応用されるようになったら、最終的にどのような成果物が期待できるのでしょうか。
有機材料の一番の利点は、軽いということ、そしてフレキシブルなデバイスがつくれるところにあります。貴金属を使わないといけない分野の場合は、それが有機材料に代替できるようになれば、レアメタルなどを輸入しなくてもいいようになるので、為替変動の影響を受けず、安く安定的に供給できるようになる。究極的にはそういう成果が得られます。