One Hour Interview
伝統材料の紙に新たな命を吹き込む温故知新融合研究
古賀大尚
紙の可能性をもっと広げたい
そもそも、なぜ紙に着目したのですか。
九州大学の農学部で植物の有効利用について研究していました。紙は植物由来の材料の最たるものですから、そのときに紙の用途を開拓したいと思うようになったのです。紙の可能性をもっと広げたい、面白いことがしたい、というところで紙の構造に着目したときに、ハニカムの代替になり得るのではないかと考えたわけです。
紙に着目したというよりは、紙からスタートしたということですか。
その方が、より真実に近いかもしれません。もちろんそれは、恩師である九州大学の北岡卓也教授から、アイデアとテーマをアドバイスしていただいたうえでのことですが。九州大学では今も後輩がこのテーマを引き継いで研究してくれていると思います。
今は、紙の蓄電デバイスの研究をされているそうですね。
電子デバイスを紙でつくるというテーマで取り組んでいる研究のひとつが、蓄電デバイスです。電池は、2つの電極の間にセパレータがある構造になっています。もともとセパレータには紙が使われることも多かったのですが、私は電極も紙でつくれると考えています。もちろん通常の紙は絶縁体ですので、そのままでは電極にはなり得ません。
そこでこの研究では、ペーパー触媒で培った技術を用いて、還元型酸化グラフェンを紙に混ぜ込む方法を採っています。還元型酸化グラフェンはナノ材料なので取り扱いにくい面があります。だから紙に混ぜて取り扱いやすくしているのです。紙にはフレキシブルにできるという利点もあります。また電極にも紙の構造が有効に働く面があります。
電極に電子がたくさんたまると、電池が長持ちします。その点、繊維のネットワークでできている紙は、比表面積が大きく、多くの電子がたまりやすい構造といえます。電子をためるときには電解液が電極にしみ込んでいる必要がありますが、その点でも中がスカスカの紙の構造がとても有効なのです。
電極は多孔質である方がいいのですが、孔が小さすぎると電解液が浸透しにくくなります。ですから比表面積が大きく、孔もある程度大きい方がいい。その最適なバランスがあるはずです。そこを追求しています。