ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

化学の視点から、二次電池材料を開発

𠮷川浩史

酸化還元活性な分子を有機配位子に用いる

松籟財団の助成金を受けられたのは2018年でした。そこから1年経ちますが、この間、どのような成果がありましたか。

 正極材料として機能するには、その物質が酸化還元反応を示す必要があります。しかし、金属イオンは酸化還元を示しますが、有機配位子は酸化還元を示さないので、そのままでは全体としての容量が下がってしまいます。そこで私たちは、MOFを構成する有機配位子に酸化還元活性な分子を用いることで容量を上げる方法を取りました。その結果、これまで知られていた正極材料より大きな電池容量を示す材料を実現でき、安定なサイクル特性も実現しています。

現状のリチウムイオン電池と比べ、容量はどれくらい違うのですか。

 条件などにもよりますが、おおむね倍くらいです。倍長持ちすると考えていただいて結構です。有機配位子と金属イオンの両方が酸化還元反応するMOFはこれまでに報告されていません。どういう配位子を用いるか、どうデザインするか、そこはかなり試行錯誤しました。

一番難しかったことは?

 合成できないことがかなりありました。合成してもすぐに沈殿したりすることもよくありました。MOFがどういう構造をしているのを知らないといけないですが、沈殿が起きるようでは構造解析ができません。何ができているのか分からないものに対しては、特性は測定できません。金属イオンと有機配位子の組み合わせは多分、無数にあるでしょう。その中でとにかくいろいろな組み合わせを試すしかありません。合成するときの溶媒ですとか、温度などの条件もいろいろ試す必要があります。そこはひたすらトライアル&エラーの繰り返しでした。

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