ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

独自の手法で創薬資源を開拓

新たな創薬資源を見つけることに限界がささやかれる中、
菊地晴久さんは新しい手法を開発し、未踏の領域を開拓しつつある。

菊地晴久

慶應義塾大学
薬学部天然医薬資源学講座
教授

枯渇しつつある天然化合物

まず、研究テーマについてお話しください。

 ひと言で言えば新しい創薬資源の開拓です。そこにアプローチする方法として、今、大きく分けて2つの手法を研究しています。多様性指向型合成の活用と、未利用生物種の活用です。

では、多様性指向型合成のほうからご説明ください。

 私の専門は天然物化学です。植物や微生物などはさまざまな天然化合物、化学物質を産生しています。そうした化合物を取り出してきて、薬のもとになるようなものかどうか研究するのは、天然物化学の1つの分野です。実際、これまで数多くの医薬品が、こうした化合物をモチーフに生み出されてきました。ただ創薬資源となり得る物質を天然化合物から探し出す研究はずいぶん前から行われてきて、いささかマンネリというか、新たな天然化合物が枯渇しつつあるとも言われています。

もうほとんど取り尽くしてしまったということですか。

 そういう傾向もある、ということです。だから今までとは違う形で創薬の資源となる物質を探す必要があります。その1つが多様性指向型合成の活用です。これは簡単に言うと、生薬から化合物を取 ってくる方法と、有機合成化学の方法を組み合わせていく考え方です。植物から抽出した物質には、いろいろな化合物が混ざった状態のエキスがあります。混合したままの状態に化学合成をかけると、混ざった状態のまま別の化合物に形を変えていき、今まで取ってきた天然化合物とはまったく違う新しい化合物が生み出されます。そうした方法を開発して創り出していくのが、多様性拡大抽出物です。

それは先生が独自に考えられた方法なのですか。

 ある意味ではそうとも言えます。植物から化合物を取り出す前に反応を変える、といった方法はずいぶん前から行われていました。ただ、多様性指向型合成は以前から注目されていましたが、それを天然物の分離精製と組み合わせる方法はおそらくそれまでなかったものです。私の方法は、有機合成化学のようにまったく異なる分子の骨格をガラッと変えてしまうような反応をかけて、新しい分子骨格を持った化合物を生み出します。その点は独自性があると言えるでしょう。

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