One Hour Interview
光応答性分子で表面レリーフを形成
汎用高分子系において表面レリーフ形成ができることを世界で初めて報告した生方俊さん。
人があっと驚くような光応答性の分子をつくりたいと意気込み、研究に取り組んでいる。
生方 俊
横浜国立大学
大学院工学研究院
機能の創生部門 准教授
フォトクロミック化合物を扱う
まずこちらの研究室の研究テーマについてご説明ください。
光に応答して何かしらスイッチする光応答性化合物をテーマにしています。中心となっているのは、光刺激に応じて色が変わるフォトクロミック化合物です。一般の方には耳慣れない名前だと思いますので、身近なものを紹介します。例えば自動調光サングラスは、外に出ると紫外線でレンズの色が変わるフォトクロミック化合物を使ったものです。一度色が変わっても、紫外線の少ない屋内に入ると室温程度の熱によって徐々に元の無色透明なレンズに戻ります。
その研究のゴールはどこにあるのでしょうか。
最終的にはレーザーの研究に活用したいと思っていました。松籟財団の助成をお願いしたのもその研究に関連したものです。当初、レーザー発振の研究を理化学研究所の先生と共同で行う予定だったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で理研と行き来できなくなり、この研究は完全にストップしてしまいました。今は、主に有機合成で新たな光応答性化合物をつくる研究をしています。
特に注力している研究はありますか。
光に応答して分子量が変わる化合物の開発です。光を照射することで2個の分子が結合する反応を光二量化といい、その逆の反応を脱二量化といいます。そうした反応を利用して、光や熱で分子量が変わるものを扱っています。分子量が変わることで、粘性や硬さといった物性も変わってきます。
材料としては何を使われているのでしょうか。
始めた当初はアントラセンという化合物を使っていました。最近はそれに限らずスチルベン、桂皮酸、クマリンなどの二重結合が付いているような化合物です。可視光によって二量化し、紫外線光によって脱二量化するようなものを扱っています。