One Hour Interview
微生物の「会話」をひもといてメタンを生成
微生物同士のコミュニケーションに着眼して
研究を進めている前田憲成さんは、
その仕組みを活用してメタンガスを
効率よくつくり出す装置の社会実装を目指す。
前田憲成
九州工業大学
大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻
環境共生工学講座 微生物工学分野
教授
微生物は情報交換している
まず研究テーマについてご説明いただけますか。
専門は微生物工学です。細菌とか真菌といった、肉眼では見えないような小さな生き物が微生物ですね。微生物は、土壌の有機物を分解することで炭素や窒素といった元素の循環に関わるなど、さまざまな働きをしています。そうした微生物の働きの中で、私たちは微生物が人間と同じようにコミュニケーションを取っていることに着目しました。シグナル分子を放出し合うことで菌密度を感知し、周りに仲間が少ないときにはおとなしくし、たくさん集まると一気に活動のスイッチをオンにします。この仕組みをクォーラムセンシングといいます。
私は現在、クォーラムセンシングを活用してメタンガスを効率よくつくり出す手法の開発に関する研究に取り組んでいます。
そのクォーラムセンシングについて、教えてください。微生物がそのような働きをすることは、前からわかっていたのですか。
1990年代の後半に名付けられた細菌密度を感知して遺伝子発現を活性化する仕組みのことです。最初に判明したのはイカが光る現象です。自分で発光器を持っているイカもいますが、発光バクテリアを体内に持っているタイプのイカの場合、クォーラムセンシングの仕組みが働いて光っていることがわかってきたのです。
バクテリアが光ることに意味や目的があるのでしょうか。
光ることでイカの近くに餌が集まり、イカが餌を摂ることで自分たちの栄養になるというように、イカとバクテリアの間に共生関係があると考えられます。そうした現象をコミュニケーションという切り口で研究するうちに、メカニズムがだんだん解明され、オートインデューサーと呼ばれる、微生物たちが使う言葉の分子(シグナル分子)が特定されていきました。