One Hour Interview
微生物の「会話」をひもといてメタンを生成
前田憲成
火薬無害化でノーベル賞!?
その研究はいつ頃から始められたのですか。
米国留学から帰ってきてからですから、2008年以降です。研究成果が論文として公表されたのは2014年からです。それ以降、コンスタントに出ています。
複雑系ということは、異なる微生物同士でもコミュニケーションするということですか。
そのとおりです。例えば大腸菌はクォーラムセンシングでアシルホモセリンラクトンという言葉となる分子を作れませんが、他の菌が作り出すその言葉の分子を聞き取ることもできるため、お互いに干渉し合います。
そういう研究をされるようになったのは、アメリカに行かれたことがきっかけだったのですか。
テキサスA&M大学での主な研究テーマは水素生成でした。ところが同じ研究室に7人いたほかのポスドクは、皆クォーラムセンシングを研究していました。それで私も関心を持つようになったのです。
そもそもどうして微生物の研究をされるようになったのでしょう。
九州工業大学の学生だったときに入った研究室が、微生物による下水汚泥の減容化を研究していたからです。学部4年生の卒研は、微生物の芳香族化合物の分解をテーマにしたものでした。その後、大学院では火薬を微生物で分解する研究をしました。この研究がうまくいけば地雷の爆発を防げるようになると意気込み、実際に火薬を無害化できたのでノーベル平和賞が獲れるかなと思いました(苦笑)。
でも残念ながら……。
地雷はプラスチックなどのカバーで覆われています。だから微生物が地雷の中に入ることができない。世の中、甘くはありませんでしたね。