One Hour Interview
より効率よく、より安定した
太陽電池を次世代に
今後10年以内の有機薄膜太陽電池実用化を目指し、
梅山有和さんは太陽電池の半導体に使う
独自のアクセプター化合物の生成に挑んでいる。
梅山有和
兵庫県立大学
大学院工学研究科応用化学専攻
教授
太陽電池の半導体に非フラーレン化合物を採用
先生の研究室は「エネルギー材料化学研究室」という名称ですが、具体的にはどういう研究をされているのですか。
エネルギー問題を材料化学の力で解決することを大きな目標にしています。研究テーマとしては大きく2つあります。1つは、有機薄膜太陽電池の材料開発。もう1つは、ナノ構造材料開発です。こちらは、グラフェンなどの化合物に有機化学の力で光の機能を持たせるのが目下の目標です。
光の機能というのは、光るということですか。
それもあります。グラフェンはC(炭素)でできていますが、遷移金属と硫黄でできた化合物にグラフェンに似たものがあり、それに有機化合物を結合させたところ、固体状態でもよく光るものができました。すでに学会での発表を終えており、今、論文を書いているところです。
先生は松籟科学技術振興財団の研究助成を2回受けておられますが、今日は2回目の助成の研究テーマだった有機薄膜太陽電池の材料開発についてお話しいただけますか。
一般的に、太陽電池の半導体の材料にはシリコンが使われています。それを有機物でつくるのが、有機薄膜太陽電池です。有機薄膜太陽電池で使われる有機半導体の中では、電子をもらいたがっている化合物「アクセプター」と、電子をあげたがっている化合物「ドナー」が混ざっています。有機半導体に光が当たると、ドナーからアクセプターのほうに電子が移動します。光エネルギーによって電子の授受が起き、プラスとマイナスができ、電流として流れるわけです。
私たちは、このアクセプターに適した新しい化合物をつくろうとしています。以前は、炭素原子が球状の構造をしているフラーレンがアクセプターとして主に使われていましたが、最近はフラーレンではない非フラーレン化合物のほうが高性能ではないかといわれるようになり、世界中で研究が進んでいます。私たちも非フラーレンの化合物開発に取り組んでいます。