ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

より効率よく、より安定した太陽電池を次世代に

梅山有和

実用化のメドは「10年後」

これまでで一番ご苦労されたのはどのような点ですか。

 太陽電池では、光から電力への変換効率が重要な要素になります。ところが、同じ材料で同じようにつくっても、学生によって変換効率が大きく違うことがしばしばあります。試薬を垂らすタイミングとか、そういうところで違ってくるのです。そこは苦労というか、悩ましいところですね。実用化するには、安定して高い変換効率を出す必要がありますから。

実用化を目指すのであれば、変換効率はやはり高くないといけないのですか。

 そうですね。それに加え、つくりやすさも重要です。現在、変換効率の高い材料としては、10ナノメートルレベルでドナーとアクセプターが複雑に入り組んだ複合膜がいいとされています。しかし、これを再現性よくつくるのは難しいです。実用化するためには、簡単につくることができ、歩留まりのいい材料である必要があります。その中で、変換効率が極めて高いというほどではなくても、長持ちして使いやすいものができると面白いと思っています。そういう点で、励起状態の寿命が長い材料は可能性があります。

つくりやすさはコストにも関わってきますよね。

 そのとおりで、何段階もの有機合成を繰り返してつくる材料だと、製造コストがかさんでしまいます。これからはシンプルにつくれて長持ちするような材料が、より求められるようになっていくでしょう。

そういう材料が開発され、有機薄膜太陽電池が実用化されて量産化されるとしたら、いつ頃になりそうですか。

 10年後くらいではないでしょうか。もし10年でできなければ、難しくなるかもしれません。同じ薄膜系の太陽電池の材料として、日本でも研究が進んでいるペロブスカイトがあります。ペロブスカイトは塗布や印刷技術で量産できるため低コスト化が期待でき、薄くて軽いため形状もフレキシブルにできます。これを上回るメリットを出せるかどうかが、キーになるでしょう。ペロブスカイトは鉛を使うという課題と、水に弱いという弱点があります。もしペロブスカイトがそうした課題を克服できたら、有機薄膜系は不要ということになってしまう可能性もあります。

不活性ガスで満たされたグローブボックス中で薄膜作製を行う梅山教授と学生

次のページ: 人と研究は互いに育て合う

1 2 3 4 5