One Hour Interview
より効率よく、より安定した太陽電池を次世代に
梅山有和
励起状態の寿命を55倍に
ナノ構造材料の研究もされていることが功を奏したわけですね。それを組み込むことによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。
有機薄膜太陽電池の弱点の1つに、エネルギーが高い励起状態になってもすぐに基底状態に戻ってしまうということがあります。励起状態にあるアクセプターがドナーと出合うことで電荷分離が起き、電子が移動するのですが、励起状態の寿命が短いと出合わずに失活してしまいます。励起状態の寿命を長くすれば、アクセプターがドナー分子と出合う確率が高くなり、電荷分離が起きやすくなります。私たちの開発した化合物は、一般的によく使われているものと比べると励起状態の寿命が55倍くらいあります。
それはすごいですね。
今はその材料をさらに改良しようとしています。ただ、この化合物でなぜ励起状態の寿命が長くなるのか、そのメカニズムがまだよくわかっていません。励起状態が失活してしまう原因の1つは、分子が動いて熱としてエネルギーを放出してしまうことにあります。それがナノグラフェンの構造を持たせることで、分子の動きを抑制するような効果があるのではないかと推測しています。今、京都大学の理論化学の先生や膜構造に詳しい先生方と共同研究しながら、その解明にも取り組んでいます。
励起状態の寿命が長いということは、変換効率の向上につながるのでしょうか。
効率の向上にも、安定性の向上にもつながります。有機薄膜太陽電池の変換効率は現状で世界最高が17~18%くらいで、私たちの化合物は14%くらいです。もちろんこれはラボレベルでの話ですが、この研究を始めたときは1%以下でしたから、大きな進歩だと考えています。