ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

今こそ100年先を見据えた教育ビジョンの真剣な議論を!

村上正紀

文理融合のユニークな取り組みを推進するR-GIRO

 2008年に設立された立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)は、次世代を担う若手人材の育成に重点を置いています。立命館での私の使命は、本学の研究(特に自然科学系の研究)成果を国内外から「透(み)える化」させることでした。この研究機構で自然科学系の研究の透える化には、人文社会学系との融合が不可欠であることを痛感しました。そのためR-GIROでは、自然科学系と人文社会学系両方の領域を研究対象にしています。文理融合のユニークな取り組みと言えます。

 このR-GIROではポスドクを約60名採用しています。しかも5年間はR-GIROで研究できることを保証しています。5年間、腰を据えて世の中に認められる仕事をし、それを実績に企業や大学に職を得て欲しいというのが私たちの考え方です。幸い、ポスドクの就職率は95%くらいの水準を維持しています。

 けれども立命館の取り組みだけでは日本でのドクターをめぐる環境を変えることはできません。

 米国ではドクターを取得すると就職がとても有利になります。ポスドクもキャリアとして評価されます。研究所などでポスドクで顕著な成果を出せば、ほぼ100%就職できます。

 それに対して日本では、社会がドクターの価値を正当に評価していない傾向があります。そうしたドクターに対する社会の価値観を変えることがまず必要です。

 ではなぜ、日米でそうした違いが生まれたのでしょうか。ここで少し米国の科学・技術史を振り返りたいと思います。

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