次代への羅針盤
若手人材の育成こそ日本再興への道
2018年秋、文化功労者に選ばれた新海征治氏。「若い人はもっと自信を持ってほしい」とエールを送りながら「そのためには自信を裏付けるものを身に付ける努力も必要」と指摘する。
Seiji Shinkai
新海征治
九州大学高等研究院特別主幹教授
集合系とバイオ系
2008年に九州大学を定年退職したときは、これで少しゆっくりできると思いました。しかし、さて、何をしようかと考えていた矢先、福岡市から市が主管する九州先端科学技術研究所の所長をするとともに、市が新たにつくる産学連携交流センターの管理・運営をしてほしいというお声がかかりました。同時に熊本にある崇城大学の教授もすることになり、さらにその1年半後には九州大学からも、高等研究院の特別主幹教授をせよという指示をいただきました。
それからちょうど10年。この間、私は後進の育成とともに、集合系とバイオ系の研究を主にしてきました。集合系では、ある特定の色素が会合したときに初めて光を出すアグリゲーション・インデュースト・エミッション(AIE)という現象の研究をしてきました。一方、バイオ系では、「β ‐1、3‐グルカン」という多糖を使うと、DNAを体内の狙った部位に運べることがわかりました。例えばDNAを免疫系の細胞の中に入れると、免疫機能を活性化したり抑制したりすることがほぼ自由にできるようになります。活性化させる作用を生かしてインフルエンザのワクチンと一緒に打つと、ワクチンがとてもよく効くようになります。抑制する作用を使えば、アレルギーの抑制に有効です。臓器移植の際に、免疫系の細胞に相補的なDNAを入れることでRNA干渉という現象が起き、移植された臓器を異物と認識せずに、拒絶反応が低減できるのではないかと考えています。