ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

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若手人材の育成こそ日本再興への道

新海征治

グローバルリーダーの育成を

 さまざまな指標や統計を見ていると、日本の社会は1980年代をピークに後退期に入っているように感じます。後退を食い止めようという試みもいくつかなされていますが、それらの多くは対症療法の域を出るものではないように思えます。現在の閉塞感を打ち破るには、若手人材の育成に通じる研究・教育環境の本質的な改革しかない。私はそう考えています。

 では、どういう人材を育成すればいいのでしょうか。一言で言えば、グローバルに活躍するリーダーになり得る人材です。そのためにはまず、自分の考えを堂々と述べることができないといけません。飛行機に乗っていて、CAから「tea or coffee?」と問われ、隣の人に「あなたはどっちにする」と訊く日本人をときどき見かけます。ほかの人と同じであることを重視し、自分が目立たないことに居心地の良さを感じるのは日本人だけではないでしょうか。そんなことではリーダーになれません。

 外国人と堂々と渡り合える能力も必要です。相手のカルチャーや考え方もきちんと理解したうえで、日本人の考え方、自分の意見を論理的、説得的に主張する。そのためには幅広い知見や論理的思考力が不可欠です。

 もう1つ、サイエンスの殻に閉じこもっているようでもリーダーにはなれません。オランダなどでは、ドクターコースを終えるとまず企業に入る学生がたくさんいます。そしてビジネスを通じて企業の考え方やマネジメントなどを学ぶと、数年後にまた大学に戻ってくる人が多いのです。社会が何を要望しているか知らないまま大学で研究をしてもしょうがないと彼らは言います。企業社会を経験すれば、企業の中にある研究の芽を捕まえることもできるでしょう。今の日本のアカデミアはいささか実用のほうにぶれすぎているとも思いますが、しかし純粋にサイエンスだけをやっていればいいとは、私は思いません。

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