ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

超分子材料設計学により生体系を超える材料構築を目指す

切断しても、また元に戻る高分子材料。
光の当て方によって右に曲がったり左に曲がったりする高分子材料。
髙島義徳さんは、そんな新しい材料の開発を目指している。
それが世の中でいったいどう役に立つのか。
基礎研究で出口を求めすぎるのはいけないことかもしれないが、
やはり気になるのはそのこと。髙島さんはその疑問にもきちんと答えてくれた。

髙島義徳

大阪大学大学院
理学研究科 高分子科学専攻
講師

高分子材料は意外にもろい

事前に資料を読ませていただきましたが、非常に難しい内容で……。先生が研究されていることを分かりやすくご説明いただけますか。

 分かりました。バックグラウンド的なことも含めてお話ししましょう。

 可逆的な結合を利用して、どこまで超分子材料を作製し、機能化できるか、というのが私の研究テーマです。

 高分子材料は丈夫なものと思われていますが、意外にもろいところがあります。実際、試験機を使って一般的な高分子材料を上下に引っ張ると、すぐに切れてしまいます。ところが世の中は、もっと高強度な高分子材料を求めています。高強度で、引っ張ったときはある程度伸びて欲しいとかずいぶん難しい要求が私たち研究者に突き付けられています。割れてもまたくっついて欲しいという要望もあります。

それはずいぶん無茶な要求ですね。割れてもまたくっつく材料なんて、あるわけがないのに。

 それがそうでもないんです。一般的に強度と伸びはトレードオフのような関係にあり、強度が増すと伸びにくくなります。ところが私たちが合成した高分子材料は、強度は一般の高分子材料と同程度なのに、引っ張ってもなかなか切れません。しかも自己修復の機能も示しているのです。

自己修復というのは、切れてもまたくっつくということですか。

 そうです。(画像を映し出して)ちょっとこれを見てください。高分子材料が再接着できるかという実験で、寒天のような樹脂を釣り糸で切っているところです。もちろん普通の高分子材料は一度切ったら、再接着するようなことはありません。しかし透明性の高い私たちの材料は、少し切りにくいのですが、切ってもまたくっつくのです。再接着した後、強度的に元に戻る材料もあります。透明性を高くすると強度を100%戻すのは難しいですが、今学生が実験している材料は70%から80%くらい、強度が戻ります。なぜこういう現象が起きるのか、界面で分子は何をしているのか。そこはなかなか難しいのですが、非常に興味深い現象です。

自己修復性超分子ヒドロゲルは通常の高分子と異なり、可逆的な非共有結合にて架橋されており、切断されても錯体形成を通した再接着性を示す。

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