ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

超分子材料設計学により生体系を超える材料構築を目指す

髙島義徳

新しい材料の起源をつくりだす

自己修復の機能などは当初から予想されていたのですか。

 いろいろトライ&エラーする過程で偶然見つけた要素が大きいですね。最初から自己修復材料をつくろうと研究を始めたわけではありません。大学院生のとき、研究室の先生から「超分子は自己修復材料になる」と言われたときは、まったくイメージができませんでした。超分子をどう材料化するのか、想像すらできませんでした。

 でもそのとき先生にシクロデキストリン(CD)というものを教えていただきました。CDには、水中で空孔サイズに応じた疎水性ゲスト分子を包接するという特徴があります。バケツ状の構造をしていて、疎水性の分子をはめ込む機能があるのです。サイズが変化するので、それに応じた分子が中に入ることができます。そのCDを使って、可逆的な結合や可動性の架橋といったツールを使えば、いろいろな材料がつくりだせるのではないか。そこで生み出される機能に自己修復性とか選択的接着もある。そこから新しい材料の起源をつくりだそうと今、考えています。

ここまでのお話を伺っていると、自己修復性の機能などを持つ材料はすでにある程度、できているようですね。

 2つの高分子溶液を混ぜると粘度が上がるという現象があります。ゾル-ゲルスイッチと呼ばれる現象で、そこから自己修復につながるのではないかという発想がとっかかりになりました。固まっているゲル内部で分子はじっとしているのではなく、自由に動いているのではないかと考え、CDと親和性の高いフェロセンという分子を使って実験しました。すると確かに自己修復性の機能が確認できました。化学的な自己修復と物理的な自己修復をつなぎ合わせた自己修復が達成できたのです。その論文は5年前になりますが、イギリスの「Nature Communications」という科学誌に掲載されました。

 さらに今年に入り、可逆的な結合と可動性を持った架橋点を持つ自然界にもない自己修復システムとして、アメリカのセル出版が発行している「Chem」(ケム)という化学誌に研究を発表しました。

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