ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

超分子材料設計学により生体系を超える材料構築を目指す

髙島義徳

人工筋肉がつくれる可能性も

基礎的な研究に性急に出口を求めるのはよくない風潮だと最近、よく言われます。しかし、門外漢の素人には、最終的にどのような成果物が得られるのか、イメージできないと研究の意義がよく理解できません。だからあえてお聞きしますが、先生の研究は最終的にどのような成果物を私たちにもたらすのでしょうか。

 異種材料の接着のところに可逆的な結合のアイデアを入れると、自己修復性の機能を持つ接着剤のようなものができるかもしれません。たとえば自動車の製造現場では、金属とプラスチックの接合が重要な課題になっています。軽量化したいため、リベットを使わず接着剤で接合する研究も進められています。しかし、日光を浴びるとプラスチックが膨張し、冷えると収縮し、割れてしまうことがあります。その点、私たちが開発した材料はたとえ膨潤して割れても、別のところで安定した結合状態を探し出して接着を維持できる可能性があります。もうひとつ、もっと分かりやすい例をお話ししましょう。

ぜひ、お願いします。

トポロジカルゲルにLED光を照射することで、生き物のように動く様子を観察できる。

 光刺激応答性超分子アクチュエータの分子設計についてです。光に応答する高分子材料で、水中で光を当てると、入射方向に応じて屈曲します。右に曲がったり左に曲がったり元に戻ったりするわけです。これは学生が実験しているときに偶然見つけたもので、ソフトアクチュエータのようなものにつながるのではないかと考えています。ひも状の分子の上をリング状の分子が滑り動くような構造にしたことで、動く速度も速くなりました。

 これを人工筋肉のようにして、医療用の材料に応用することも期待できます。また、現状のパワードスーツはシリンダーや金属でできていますが、重量や硬さなどの点で人間が実装するにはいずれ限界がくると思います。こういうソフトな材料をパワースーツに使うことも考えられるのではないでしょうか。有機ELなどを使えば省電力で動かせるようになり、バッテリーも小型化できるでしょう。ゲル状の材料として止血シートにも使えるかもしれませんね。

材料設計に分子の可逆的な結合と可動性の架橋を駆使することで、逆の応答性を観察できる。

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