次代への羅針盤
安全で安心して暮らすための長寿社会づくりを
検事を経て弁護士になり、テレビ出演もこなす八面六臂の活躍ぶり。その間、結婚し、子育てもしてきた。圧倒的な男性社会の法曹界で、逆風にさらされながらも男女共同参画事業などで確かな実績を上げてきた。そして今、超高齢社会の日本で、高齢者や女性が生き生きと活躍し、安心して暮らしていける社会システムづくりに邁進する。
Hiroko Sumita
住田裕子
弁護士/NPO法人長寿安心会代表理事 公益財団法人 松籟科学技術振興財団監事
女性の活躍度、先進国では日本は低位
安倍政権は成長戦略の重要な柱に「女性の活躍」を据え、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする数値目標を掲げています。しかし現状は約10%で、先進国の中では低位にあります。もちろん研究者においても指導的地位に占める女性の割合は極めて低いのが実情です。
実は安倍政権の掲げた30%という目標は、2003年に「内閣府男女共同参画会議」が提唱したものです。この男女共同参画会議は、行政改革の一環として内閣府が組織された際、日本の4大重要政策推進のために設置された4つの会議のひとつです。私は、この会議の構成メンバーの一員でした。
1951年生まれの私は、男女雇用機会均等法以前の世代です。東大法学部を卒業しても、女性には民間企業への就職はほとんど無理でした。国家公務員も、上級職で女性を採用するのは労働省(現厚生労働省)などごく一部だけ。同級生の男性は一流企業からいくつも内定をもらって就職していきましたが、法学部630人中18名の女子学生はひとりも企業に就職できませんでした。公務員や研究者になったのが数名で、あとの13名は私も含めて司法試験を目指しました。女子学生にとっては本当に選択肢の少ない時代だったのです。
しかもようやく司法試験に合格しても、司法研修所の裁判教官が「女性は司法研修所を卒業しても、家庭に入って能力を腐らせる方が幸せ」と、のたまった時代です。私が、同期で同僚の男性検事と結婚したときも上司からは 「夫の出世の足を引っ張らないように、仕事は早く辞めた方がいい」といわれたほどです。