次代への羅針盤
安全で安心して暮らすための長寿社会づくりを
住田裕子
女性の意欲・能力の多くは閉じ込められている
ところが1975年に国連で国際婦人(女性)年が始まると、その後の10年で大きく流れが変わりました。女子差別撤廃条約批准のため男女雇用機会均等法の制定と国籍法の改正が実現し、「女性も登用すべし」との波が日本に、そしてようやく法務省にも押し寄せてきたのです。やがて官房・刑事局に女性検事が抜擢され、私も初めての民事局付検事を命じられました。
当時、民事局では男性中心主義の国籍法を男女平等に改正した後、国際私法の改正が課題となっていました。私がその担当局付検事となり、法制審議会を経た法案を国会に提出し、各所に説明をして回りましたが、「男女平等、当然」と異論はなく、全会派一致で成立しました。検事に任官して約10年。その間に社会での女性の地位・女性観が「表向き」大きく変わったことに、隔世の感がありました。
その後、大臣秘書官にも任命されました。政治の世界を垣間見る面白い経験でした。そして、検察の現場に2年ほど戻ったのですが、すぐに司法研修所、次いで法務省訟務局に異動となり、もう検察の現場には戻れないことが予想されました。そこで、すっぱりと弁護士に転身することに決めたのです。45歳の決断でした。
弁護士になって、いろいろな話が舞い込みました。法律改正をした経験が買われ、多くの政府系審議会の委員にもなりました。そうした審議会のひとつに、総理府の男女共同参画審議会があり、そこで男女共同参画社会基本法の制定作業にあたりました。これが、内閣府が組織されたときの男女共同参画会議に発展的に移り、私もその一員になったのです。
日本の女性の活躍度は,先進国では下位グループです。女性の活躍指数としての、世界経済フォーラムによるGGI(ジェンダー・ギャップ指数)は年々下がり、2013年は136カ国中105位でした。教育、健康などの能力は、世界のトップクラスにあるにもかかわらず、政治(国会議員数等)や経済活動(管理職の数等)における意思決定過程への進出が著しく遅れているからです。
憲法に男女平等が規定され、民法他すべての法律にもその趣旨が記載され、制度上は男女平等が貫かれているのですが、GGIが日本の女性の活躍はまだまだ低レベルであることを如実に物語っています。女性がその力をいかんなく発揮する以前の段階。女性の意欲・能力の多くは、閉じ込められているのです。