次代への羅針盤
やりたいことをやればいい
細野秀雄
日本はもう世界トップクラスの科学技術先進国ではない
中国の科学技術はこれまで、先進国の模倣だと言われてきました。でも、日本も以前は欧米の模倣ばかりしていました。その前は米国が英国の模倣をしていました。欧米から日本、そして中国へと、科学技術の先端はだんだんアジアへシフトしてきています。もうそろそろ中国でも画期的でオリジナルな成果が出てくるでしょう。数十年経てばノーベル賞受賞者もきっと出てきます。
逆に日本はノーベル賞受賞者が出てこなくなるでしょう。理由は簡単です。国力がどんどん落ちているからです。日本では科学技術に対する投資がこの10年、ほとんど伸びていません。アメリカ人であろうと中国人であろうと日本人であろうと、人間の能力に格段に大きな差があるわけではありません。それならば、どれくらい投資するかで差が出てくるのは当たり前のことです。
日本の国力が急上昇したのは1980年代から90年代にかけてです。科学技術にすごく投資した成果が表れたからです。でも、残念ながら今日本はもう科学技術先進国とは言いがたい状況です。強かった材料分野でも日本は世界のトップ5に入っているかどうかというところでしょう。アカデミアに就職口がないからドクターに進む学生も減っている。全体として日本は研究の面でも衰えていくでしょう。
でも、マスとしての競争力は衰えても、個人も衰えるとは限りません。若い研究者には、日本に閉じこもらず、世界にどんどん出ていってほしいと思います。