次代への羅針盤
やりたいことをやればいい
細野秀雄
厳しい時代だからこそチャンスもある
今の若い人の中には優秀な人がたくさんいます。よく勉強しているし、英語もうまい。だから他の人が思いつかないような組み合わせを考えるとか、体力勝負ではないオリジナリティで勝負すべきです。本当にやりたいことをやればいいのです。好きでもないことは、どうせ長続きしません。
世の中の役に立つかどうかは分からないけれど、学問的に深いからやってみるというのもいいと思います。学問の本質はむしろそういうところにあるのです。数学がいい例です。高等数学が世の中の役に立つことなどめったにない。でも、抽象化する力とか論理的思考力を養うという意味でも数学を学ぶ意義は大いにある。
研究を成功させるノウハウなどありません。オリジナリティのあるテーマを自分で徹底的に考え、失敗を繰り返す。そういう当たり前のことを当たり前にやっていくしかないのです。
確かに今は厳しい時代です。戦国時代と言っていいかもしれません。でも、だからこそチャンスも多いはずです。こういうときこそ、いい時代が来たと思うくらいの気概を持って、好きなことを思い切りやる。日本という国の将来は楽観できないかもしれませんが、自分の未来まで悲観する必要はないのです。
オリジナリティのあるテーマを自分で徹底的に考え、失敗を繰り返す。そういう当たり前のことを当たり前にやっていくしかない。
細野秀雄[ほその・ひでお] 東京工業大学 元素戦略研究センター長&科学技術創成研究院教授 1953年、埼玉県出身。東京都立大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。名古屋工業大学工学部無機材料工学科助手、ヴァンダービルト大学客員助教授、名古屋工業大学工学部材料工学科助教授、東京工業大学工業材料研究所助教授、岡崎国立共同研究機構分子科学研究所助教授などを経て、1999年4月、東京工業大学応用セラミックス研究所教授。2009年には紫綬褒章受章、2013年には トムソン・ロイター引用栄誉賞、2015年恩賜賞・学士院賞、2016年日本国際賞受賞。「オリジナルな研究というのは孤独な作業なので、孤独に耐えられることが必要」と言う。
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