ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

化学に効率を求めてはいけない

超分子重合を世界に先駆けて提唱し発展させてきた化学者が
「常識を疑え」と喝破する。

Takuzo Aida

相田卓三

東京大学大学院工学系研究科 教授

材料リサイクルが容易に

 1988年、東京大学工学部の助手だった私は、分子同士を化学反応でつなぐのではなく、接着させることでつなぎ、ポリマーを合成できないかと考えて実験をし、溶液中である分子が共面集合して一次元の集合体を形成することを見つけました。ただ、そのとき私は古典的な化学反応で高分子をつくるのが本業でしたし、研究室の目指す方向とは違っていたので、この研究をいったんやめました。もともと好奇心で始めたことでしたし、この考え方がそれほど重要だとは思っていなかった、ということもありました。

 実はこのとき得られたものが、超分子ポリマーのプロトタイプとみなすことができるものだったのです。

 従来の重合反応では、分子が共有結合によって不可逆的に結ばれて鎖を形成します。したがって、いったん結ばれた鎖は簡単には切断できません。それに対して超分子重合では、非共有結合により分子が接着するように結ばれて鎖を形成するので、その鎖は簡単に切断したり再構築したりできるようになります。

 この超分子重合を使ってモノをつくれば、それが不必要になったとき、捨てるのではなく、つくり替えることができるようになります。リサイクルを考えなくてもよくなるということです。

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