次代への羅針盤
化学に効率を求めてはいけない
相田卓三
蒸発を防ぐには
私たちが開発したアクアマテリアルの組成は、水が98%で無機物が約1.9%、有機物が0.1%程度です。水の含有率が同じくらいのこんにゃくと比べると、このアクアマテリアルはその500倍くらいの強度を持っています。また非共有結合によって形成されているため、切り口同士を接合すると、すぐに接着するという自己修復性も持っています。
ただし、このアクアマテリアルには、構成成分の水が蒸発してしまう、という問題があります。水が蒸発していくと、材料としての特性も変わっていってしまいます。だから使える場面が限定されます。人間の体内で使うということは考えられるでしょう。人間の体もほとんど水でできていますが、皮膚があるため蒸発しにくくなっています。
2008年にフランスの研究者が自己修復性を示すゴムを開発したとの発表がなされました。私はその論文を読んで、ゴムが自分で修復するのは面白いが、それほど驚くようなことなのかなと思いました。ゴムのような柔らかい材料は引きちぎれても分子がまた絡んでいくことが不可能ではないかも、つまり自己修復ゴムもありかなと思いました。