次代への羅針盤
化学に効率を求めてはいけない
相田卓三
マインドチェンジが必要
でも、硬い材料でそれができたら面白い。そんなことを考えているときに学生がちょっと変わった現象を発見し、報告に来ました。そして私の部屋で議論して、面白いからその研究をしようということになりました。そこから生まれたのが「自己修復ガラス」です。
最近、最初に決めた研究計画どおりに研究を進めることに、ことさらこだわる人がいます。しかしサイエンスは常識を破らないといけない学問です。研究計画どおりに進めていたら、常識は破れません。学生が予想外の現象を見つけたときも、もし研究計画にこだわっていたら、「それは計画とは違う」と切り捨てていたでしょう。
私の研究室では、常識を破ると「すごい」と言われます。ところが日本の教育は常識を疑う教育になっていません。子どもの頃からずっと常識を共有することばかりを教えられて育ちます。ですから私の研究室に入ってきた学生はまず、常識を疑うというマインドチェンジをする必要があります。そしてしばらくするともう1回、マインドチェンジを迫られることになります。言われたことを粛々とやっているだけでは、面白いことはできないという現実を体験するからです。